• 祈り

食卓に着く人と給仕する者と、どちらが偉いでしょう。むろん、食卓に着く人でしょう。

しかしわたしは、あなたがたのうちにあって給仕する者のようにしています。

            (ルカ22-27)

 

職業を今のように自由に選べた時代の話ではなく

なによりこのことばは、三位一体の人となられた神・イエス様が語られた言葉です。

 

そのあと十字架に架かり死んで三日目に蘇り

わたしが道だ、わたしを通れ、と永遠の命の道を示します。

 

神が給仕をする者のように仕えているということばは、

洗礼を受けた後、

人の言葉が生む「謙虚」 の概念ではなく

段違いの畏怖を知ることになりました。

 

***

 

人は神に造られた被造物

自分もだが

他者を見る時、

それが神によって造られた存在であるということの悟りを得た時

「謙虚」な人に出会うと恐ろしいな、と思うようになった。

 

神様にむき出しで対峙してしまったような感覚に陥った。

 

***

 

数年前

次男坊を連れて教会へ行った。

 

10年ぶりに再会した翌日に行った。

 

前日、また会えなくなるだろう息子へ

一生に一度のお願いを言っていいかと確認をし、

「洗礼をしていい?」

とお願いをしたら、いいよ、とホテルの浴槽で私の手で洗礼をした。

 

私はなまみであなたと別れて生きる力がなかった。

 

死んだらあなたに無責任、かと言って立ち上がる力もなかった。

 

そんな時、洗礼を受けたのだと説明できる心の距離がとれるはずもなく

「食べて、食べて」

とひたすらもう入らない、という息子にステーキを食べさせ、

急きょ一晩泊ってきても良いという許可があり、

緊張したホテルで、時間がどんどん過ぎていく中で

出た言葉だった。

 

翌日の日曜日、教会へ行った。

 

***

 

遠慮と緊張と焦りが互いの中で葛藤しているにもかかわらず、

時間だけは無情にも過ぎていく。

 

あなたの手術の時、お祈りをしてもらったんだよ、と

牧師さんに紹介していたら少年がすうと傍へ寄ってきた。

 

息子と同じ疾患でオペをした牧師さんの息子さんだった。

 

3歳の時、見舞いに行って以来の再会だった。

 

「同じような手術をしたんだよ」

と二人を引き合わせた。

 

10代前半の少年たち

息子は顔も覚えていない、という母親に昨日会ったばかり

教会へ来たのも初めて

緊張しているところに、さらに見知らぬ少年を紹介され、

 

「Yくんは3歳だったかな、手術の事覚えていないよね」

 

Tシャツをめくり痕を確認しようとする母親と認識していいのか

距離もまだつかめていない人の無礼に、息子はさらに緊張して後ろへ下がった。

 

Yくんは自分から首までシャツをめくりあげた。

 

息子が慌てて、大丈夫ですからと

シャツを下ろすように恐縮しながら頭を下げると

 

「これです」

 

とYくんが指で息子に手術痕を示してくれた。

 

「ありがとう。同じような痕があるもんね」

 

と私が息子に言うと、息子が頷いた。

 

***

 

Yくんも息子もまだ十代初めの少年

それなのに二人は驚くほど咄嗟に優しかった。

 

Yくんは、その場の空気で息子の境遇をはかり、

私のパニックのような失礼にも真摯に応え、

息子のいいようもない孤独の殻を共有してくれた。

 

まさかの子どもが見せた神対応。

 

息子は親の無礼をごめんなさい、と・・・同時に

シャツを人前でめくろうとする同世代の少年に恥をかかせまいとした。

 

***

 

息子とYくんはそのあと会う機会がなく歳月がたっている。

 

私と息子が、その時限定の再会だったからだ。

 

そういう状況を誰に説明された訳でもない一期一会の瞬間で

Yくんからいただいた謙虚。

 

息子からもらった謙虚。

 

***

 

過酷は彼にも次々あった。

 

牧師さんからそのあとのことを聞き、

私は泣くだけ泣いた。

 

***

 

いつも給仕する者のようにいる。

 

私は給仕してもらったよ、Yくん

君の優しさが忘れられない。

 

大人の誰が君のような近さで

あの時の酷な親子の再会を慰められたというのだろう。

 

「苦しくて嬉しくて時間よ止まれ、永遠に止まれ」

 

張り裂けそうな寂しさ、

その空間に君はすうと入ってきた。

 

あなただから入れたのだと思います。

 

神様の霊は人のうちに住むということを見た瞬間だったように思う。

 

「謙虚」

 

はかれないほどの苦労を味わい

それをただ受け止め生きてきたあなたには

目の前の他者の苦悩を見抜き手を差し伸べる力がある。

 

もう一度、君に会いたい。

 

あなたには多くの人を助けるタラントがある。

 

伝えないといけない、と今も改めて思う。

 

給仕をする時の集中力は

他者のニーズを読み取り的確に提供する

「神対応」が求め続けられるように思う。

 

次世代を応援したい、しなければならない、

私には悔いが多い。

 

 

 

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