いよいよ東京を発つ

 

TVもパソコンもない、夜になれば星と動物の鳴き声と木々の揺れる音しか

聞こえない南国へ行く。

 

私はいいが、

自分で飛行機のチケットも買えなければ、ご飯も買えない。

行く場所を選べない子供を伴って、移動しようとしているが、

この子が培ってきた場所・時間・仲間・経験、すべてを止めて

違う場所へ行こうとしていることをこの子は止めることができない。

 

私はなんという残酷な親だろうか。

ここ一週間、そういうことを考えると、何もする気が起こらず

準備が進まなかった。

 

二拠点生活というが、

子供は、どちらかの拠点で仕事に就かなければならない。

慣れている中堅の今の場所から、また新人をやり、大変だろうなと思う

グダグダとすっきりしないまま時間は過ぎ、

荷造りも万全ではないまま、発つ日が近づいている。

 

東京暮らしは楽しかった。

仕事は辛かったが、あっという間に時間が過ぎていった。

 

自分の中の東京ある、あるは、

凄い人がいくらでもいるという、あとで恥ずかしくなるある、ある。

何度も、ああ、またある、あるだ、と、ここは東京だった、と思うこと

 

私は

人の話に感情移入するのが早く、かわいそうだと思うと助けたいと

すぐ動いてしまう。おせっかいな田舎の典型的なおばちゃん気質を持っている。

 

地方から出てきた両親はすでに亡く、郷里には伯母がいるが、墓守りを頼むのが

せいぜいな関係だと、ぽつりと話すお兄さん

 

もう情が動いて、動いて

あれやこれや、何かと持たすわ、声かけるわで、そういうある日

一緒に食事へいった。

お酒が少しまわって・・・まずは待ち合わせ場所から・・・?

東京にだいぶ慣れておられますね、もう郷里には誰もいないから終の棲家

ですものね、頑張っておられますね・・・とこちらは気持ち優先でしゃべり倒す

 

2時間、3時間、楽しいおしゃべりの間でわかったこと

 

この人、大変なおぼっちゃまだった。

東京生まれの東京育ちのおぼっちゃまはご両親は超エリート

いつもボロボロな服着ているので、バレンタインデーにはセーターを

プレゼントしたこともあるのよ。

 

実家の一軒家で一人息子で親は亡くなっているのだから・・・

暮らしているよね、当然・・・

彼が何かの研究に打ち込んでそこにしか住めない地方にいた時のマンションを

親が購入してくれてそこもあるし・・・

未婚のまま天へ召されたおじさまの遺産も引き継ぐし・・・

 

なんなのあなた

 

僕、お金、困っているっていいましたっけ

僕、地方で生まれたって言いましたっけ

 

ええ~、だって、洪水のニュースの時、伯母が住んでいて、って

ええ、住んでいますよ、でも僕は・・・

 

もう叩くよね

とバチンと腕を叩いて、

なんでかな、なんで同情のスイッチ入ったのかな、どこからかなあ

 

服、服だよね

そうよ、あのセーター、何故、着ないの?

きっと趣味が合わないんじゃない

傍から静かなジャッジの声が入り、

 

ああた、じゃあ、寂しくないのね。

いやあ、寂しいは寂しいですよ。

ふ~ん・・・

 

これは1話

 

元弁護士さんだと知らずに偉そうにべらべら何かを教えてしまったこともある。

長い黒髪の清楚な美人さん、

優しそうで、オペ室での仕事が始まるというので、心構え?みたいなことを

聞きたいと紹介されたので、マシンガントークで誰も止められない域まで達した時

 

あまりにも素直で呑み込みが早いのにようやく気づき

あなた、何?

 

ああ、彼女、弁護士さん

紹介した人が横から教えてくれた。

ふ~ん・・・

 

2話

 

自分のルーツに及んで質問続きの中

だんだん自慢も足されて饒舌になった私に

あの人、00の孫だから、と相手がかかってきた電話に失礼と席を立った

隙間に教えてくれた知人の顔はすでに蒼かった。

 

3話

 

こんなのばっかりで

もう調子にのって喋らせられてはいかん、とようやく東京ライフに慣れて

いったが、

 

田舎とちがうのが、人の底力

 

初めはヘナヘナに見える人でも、折れない

そもそも競争に生き残って立っている人たちだということを念頭におかなければ

足元をすくわれるような自分の弱さを感じてしまう瞬間が何度もあった。

 

そういう場所へ

田舎で幼少期を伸び伸びと過ごしてきたほぼほぼ天然の

上の子たちを置き去りにして

私は下の子を連れて、時間に追われることのない田舎へ行こうとしている。

 

すぐかわいそうだ、と誰彼のことをいう私の横で

一番かわいそうなのはあなただよ、と教えてくれる人がいる。

 

心置きなく

喋れて

世話がやけて

情をとかして、

そういう場所をつくりに行くと思えばいいじゃないか、と

 

たぶん、みんな行くと思うよ、と

 

私がいちばん、きっと寂しいのだと思う。

家、人が泊まれるように、と考えるところからはじまるのだから

ついていく子供は、大丈夫だよ、

みんな旅行で来てくれるよ、と笑っている。

 

やっぱり二拠点だと脳に言い聞かせた方が寂しくない。

東京ライフは気づけばもうふるさとへのホームシックを上回ってしまっている

 

出会った人はみな優しいし、私以上の情持ちだった。

じわじわとあとでくるスマートな人付き合い。

生きていくって・・・

別れって・・・辛いものです。

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