• 思い出
島での珈琲タイム

島の友人は芸能人並みのスケジュールを持つ。

手帳やなかにはスマホで、「ちょっと待ってよ~、その日はね」

とすぐに会食日を入れてくれるわけではない。

 

みな、役割が多くてゆったり過ごしているようで忙しい。

そんな感覚が戻ってきたのも滞在して数か月が過ぎた頃。

太陽の日差しを浴びてセロトニンいっぱいなのも羨ましい。

写真は海が見えるカフェ・レストランで珈琲タイムした時のもの。

 

***

 

田舎育ちの私は長じると、反動なのか、仕事で上京した時や外国を訪れた時など

思い出すと恥ずかしいが、誰やねん! って突っ込みたくなるようなファッションで大股で街中を闊歩することが大好きだった。

 

ああ、自由

自由って気持ちいい

 

女優力、主人公力を全部出し切って

疲れたら、街中の公園のベンチで珈琲タイムをした。

 

ロサンゼルスの公園で野外コンサートが視野にかすかに入るベンチで珈琲をひとり飲んでいると、

「日本人かい?」

と初老の紳士が横に座わり、話しかけてきた。

 

そうです、というと、

片言の英語と片言の日本語の奇妙なコミュニケーションが始まり、ジェスチャーが体操のように大きくなって、しばらくすると不思議なことに会話が成立していた。

 

アメリカに憧れているのかい?

頷くと、私は日本にあこがれを持っているのだと首をすくめて笑う。

 

「キクトカタナ?」

知っていますか? と問うてくる。

 

知っています。

「恥の文化」 と言うと、あなたはキュートだと褒められた。

 

罪の文化? と問うと、早口の英語でペラペラと喋りがエスカレート。もちろんなんにもわからない。

そうこうしている間にコンサートも終わったようで、帰らなきゃ、と思っていると

その方も寂しそうな顔をされた。

 

それで紙に

「一期一会」

と書いてお渡しし、意味を伝えられるだけ伝えて、お元気でと頭を下げた。

また会えるよ、天を指さすその方の優しい笑顔に思わず涙がこぼれた。

 

だから私は日本人が好きなんだ、とハグをしていいか、とその方は杖を置いてハグして下さりお別れした。

 

一期一会は、そうかあ

今生のことか。

 

天国で再会すると思うと、逆に一期一会に力が入るよね・・・

 

それから私の一期一会の概念は変わった。

 

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