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ある会合で、無口な方だろうとあえて挨拶へ行かずにいたら
あちらから近づいて下さり、乾杯をして下さった。
「あなた、〇〇さんの娘さん?」
はい、そうです、と緊張してこたえると、
私はあなたのお父さんのファンでした。このたびは・・・
とお悔やみの言葉を頂戴した。
若い頃、著名人を案内する機会が多く、
私の父によく電話で依頼をしていた、と。
ある日、約束していた客人を紹介しようと声をかけに寄ったら留守で、ね。
正直、無責任なヤツだなあ、とカチン、ときましてね、
私一人で案内するには荷の重い有名な方で、
一緒についてきた若いお嬢さんがたがまた元気で、
案の定、海を見るなり
わあ~!!
と泳ぎだしたんですよ。
流れが速いので、絶対、ダメですよ、と説明していたんですがね、
次々飛び込んで、あっという間に潮に流され始めたんですよ。
驚いて、とにかく浜を走って、
遠くにあなたのお父さんを見つけてね、
手を振ったんですよ。
流木に腰かけて煙草を吸って、まったく見向きもしない。
僕はもう走り疲れてね。
座り込んで石でも投げて合図を送ろうとしたらね、
あなたのお父さん、
立ち上がって、海に入っていって、
流れてくる女の子を一人、また一人、
次々浜へ担ぎあげてくるじゃないの。
きれいな抜き手でね、あっという間に捕まえていくんだよね。
惚れた、ね。
男が男に惚れた
ものすごくかっこよかった。
シャワーを使い終わった客人たちのために、
新鮮な魚やイカや蛸が刺身に下ろされていて、
テーブルいっぱいに酒席の用意がすでにされていたらしく、
「人ったらし、だったね」
流される場所もよんでいて、ね
僕は、ね。いやあ、好きだったなあ。
ありがとうございます。
お調子者で・・・ご迷惑もおかけしたことと思います、と
父が亡くなって日も浅かったこともあり、
ありがたい乾杯に感謝した。
脳のA10神経が、心地いい・・・と、
最初に記憶したのは、父親。
母のことを書こうとしていたら
人ったらしが天国から夢に現れた。
それで、忘れないうちに書いています。
堂々のファザコンです。