- 投稿 2023/11/14
- 思い出
空き家を掃除しながら8か月滞在し、もうすぐ東京へ戻ろうかという一週間前、
夜10時にピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
夜9時に寝て朝5時に起きる田舎のポツンと一軒家暮らしの気分の女子二人、
10時はもう深夜。
***
恐る恐るカメラを見たら、金のネックレスの強面のお兄さんが立っている。
「どちら様ですか」
反応したほうがいい、ととっさの判断で返すと、名前を名乗る。
聞きづらい。
困っていると、「○○ちゃん、○○」
ちゃん付で呼ぶ人は限られている。
すぐに玄関ドアを開けると懐かしい小学生以来のいとこの姿。
大人になって数回法事などで会ったことはあるものの、対面はほぼ小学校以来。
***
「夜の10時だよ」
「もしかして寝てた?」
「そうさあ、朝、5時起きしてるから」
「畑?」
「ええ? かっこいい、あこがれること刺激しないで」
「僕、5時に畑だよ」
「えっ? うそ、マジか」
***
本当の深夜12時半ごろまで、泣いて笑って話が止まらない。
ハンディのある娘が、「帰らんでえ」と一度で情が深まってしまった。
退職後に珈琲農園をするために来島していること、仕事のこれまで、親や姉妹のこと、止まらない、話の機微が合うこと、合うこと。
兄弟姉妹のようなズカズカ言いすぎるなあ、というところもなく、友人よりも濃いDNAの細かい記憶、あの時のあのシーン、止まらないシェアの数々。
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翌日も暇な私たち親子を農園予定地に案内し、食事に連れて行ってくれた。
その翌日は、目の前でステーキを焼いてくれるお店で、うちの子はすっかりいとこのファンになっていた。
「癒される~」
と喜んで手を繋いでくれるおじちゃんの手をしっかり握るいまどき女子。
帰り、農園予定地から見上げた夜空はあまりにもきれい。
海を見下ろす丘は夜のとばりに星が花火の終わりのように降ってくるかのような火の粉の点在に見える。ほんのりと色がついているような星が美しかった。
***
そうかあ、もう帰るんか・・・
途中、長いな、と思った日もあったけれど、あっという間に一週間が過ぎてタイムスリップしたようにここに座っている。
***
朝日を見たくて、という。
ここからの朝日?
なんて凄いこと、どうやって思いついたの?
いいと思わない? 朝日を見ながら珈琲を淹れて飲むと最高だなあと思って
それはそうです。私のブログ、「珈琲タイム」ってつけてるんだよ。
「珈琲好きなの?」
DNAかあ
DNAだねえ
いいよねえ、最高だよねえ
***
珈琲はもう全部植えたよ、とメールがあった。
ペンより重いものもったことがないよ~、と足がデコボコ荒れ地に慣れない、痛い~、腰が痛い~
「イノシシと戦える? 出るかもよ」
「死んだふりする」
許してくれないよお
・・・
「それより夜誰も通らないし真っ暗だし、一人で寝るの怖いかも」
ええ~、ぽつんと一軒家のスピリッツないやん
ないよ
ええ~
そんなこんな小学生のノリで冗談ばっかりいって置いてきてしまった弟分
大好きだったおばちゃんを思い出しながら、珈琲農園、訪れる日を楽しみにしている。