• 思い出
人ったらしだった父

 

 

(過去記事)

 

ある会合で、無口な方だろうから、とあえて難儀はしたくないな、と見覚えのある方の所へ挨拶へ行かずにいたら、あちらから近づいて下さり、乾杯をして下さった。

 

「あなた、〇〇さんの娘さん?」

はい、そうです、とパーティ慣れしていない新参者丸出しで緊張してこたえると、

 

私はあなたのお父さんのファンでした。このたびは・・・

とお悔やみの言葉を頂戴した。どうしても外せないパーティに喪が明けて早々顔を出している労もねぎらって下さった。

 

***

 

慣れない場で頑張る私をサポートして下さるように、横で立って、そのまま父とのエピソードを語って下さった。

私は若い頃、著名人を案内する機会が多くてね、あなたのお父さんにどれだけ助けられたか、恩人だと思っています、と

 

ある日、いつものように約束していた客人を父に紹介して案内を、と声をかけに寄ったら職場におらず、無責任なヤツだなあ、とカチン、と頭にきただけでなく、どうする、時間はないぞ、と焦ったらしく、

 

「私一人で案内するには荷の重い有名な方で、一緒についてきた若いお嬢さんがたがまた元気で、案の定、海を見るなり、わあ~!!ですよ。すぐに泳ぎだしまして、流れが速いので、絶対、ダメですよ、と車の中で説明していたんですがね」

 

次々飛び込んで、あっという間に潮に流され始めたらしく、溺れるのも時間の問題だと、必死で浜を走ったらしい。

 

遠くにあなたのお父さんを見つけてね、すぐに大声で呼んで手を振りました。

 

流木に腰かけていて、聞こえないのかまったく見向きもしないから正直腹が立ちました。

私はもう走り疲れて座り込んでしまったね、砂浜走るの慣れてないですからね。石でも投げて合図を送ろうとしたら、あなたのお父さん、立ち上がって、海に入っていって、あれはみごとなクロールでした。流されてくる女の子を一人、浜へ担ぎ上げて、すぐに次も助け出してね。あのきれいな抜き手、あっという間に捕まえていくんだよね~。波、流れ速いのにね。

 

惚れた、ね。

男が男に惚れた

ものすごくかっこよかった。

 

シャワーを使い終わった客人たちのために、

新鮮な魚やイカや蛸が刺身に下ろされていて、

テーブルいっぱいに酒席の用意がすでにされていたらしく、

 

「人ったらし、だったね」 

 

流される場所もよんでいて、ね

私は、ね。いやあ、好きだったなあ。

 

ありがとうございます。

お調子者で・・・ご迷惑もおかけしたことと思います、と

 

失ったばかりの父への寂しさを包み込んで下さった、ありがたくも優しい乾杯に、

素敵な大人って本当にいいなあ・・・こんな大人になりたい。

十分大人年齢でしたが、背伸びして参加したパーティの意義を知った夜となりました。

 

脳のA10神経が、心地いい・・・と、

最初に記憶したのは、父親。

 

母のことを書こうとしていたら

人ったらしが天国から夢に現れた。

 

それで、忘れないうちに書いています。

堂々のファザコンです。

 

 

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