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生まれて初めて雪を見たのは長女が生まれてすぐの年
出張で上京してきた父親を迎え、大学生だった弟が訪ねて来た夜
外、外
と、玄関を開けて入ってくるなり、「お父さん」と父を呼ぶ弟
パジャマのままの父は息子会いたさにすぐに玄関へ。
「おおう、元気だったか」
「違う、外、外」
外へ連れ出された父は、真っ白な生まれて初めて見る銀世界に立ち尽くしてしまった。
私もあまりにも静かな別世界の現れように息が止まりそうだった。
三人とも雪を初めて見た夜だった。
鍋をつつきながら、
トイレのついでに何度も外へ出ていきたがる私と父のためにカーテンを全開大にして、小さな縁側に座って、生きていて良かったあ・・・と同じようなことを何度も互いに言っては、珈琲をのんでいたことを思い出した。
父が帰った後も積もった大雪が嬉しくて
雪だるまをこそっと大きく遊歩道の傍で作っていたら、
スキー板を履いている人が歩いてきた。
気まずそうなのはお互いなので、見ないように配慮したが、やっぱり後ろ姿は目で追った。
スキー板を履いている人をTV以外で見るのは初めてなので仕方がない。
数時間で音もなく現れる白銀の世界は、南国の人には刺激的すぎる。
神様ってやっぱりおるんだねえ
そんなことを縁側で語り合っていたように思う。
息子の大学の合格発表を待たずに上京して東京へ住まいを移したが、
合格がわかった日、雪が降った。
どんどん積もっていく雪道をコンビニめがけて歩き出し、
神様、ありがとうございます。ありがとうございます、と泣きながら歩いた。
雪の中を歩くのは、別世界へタイムスリップしたような感覚なので、
神様、ありがとうございます、と言うのに一番適していると思った。
自然を圧倒的に感じれる瞬間は、やはり神がかりを感じるから、東京で見る雪は
大変だけれど涙が出る。
四季のある暮らしに慣れるまで大変だったが
冬は冬で美しい
家の中が温かくてこもる生活がいとおしい。
そこから連れ出してくれる梅に桜に春風・・・
さて、また窓を全開にして雪景色を見ながら珈琲タイムしよう。